「私は大理石の中に天使を見た。そして天使を自由にするために彫ったのだ。」
:ミケランジェロ・ブオナローティ[彫刻家]
ルネサンスの三大巨匠であるミケランジェロは間違いなく天才でしょう。
ミケランジェロの彫刻を見ている間、誰もがその像が石でできていることを忘れるのです。
これ、夜になったら動くやつじゃん。
…と思ったそこのあなた。
大丈夫、正常です。
ミケランジェロは大理石のかたまりの中に、このダヴィデが見えたのです。
そしてその石の中からダヴィデを自由にしました。
この彫刻を見たとき、僕らはそのミケランジェロの言葉に納得してしまうのです。
ミケランジェロはその言葉通り、大理石の中から天使を自由にしてやりました。
そして僕らは自分の中に埋れた天使を自由にしてやるべきなのです。
その天使のことをここからは美学と呼びましょう。
閉じ込められた天使
僕らは教育により、自分の天使(=美学)を表現することを制限され、代わりに与えられた環境に従属するように育てられてきました。
天使を自由にするのではなく、できるだけ天使を抑制することが良しとされてきたのです。
でもそれはなぜでしょう?
今の日本の教育は戦後の教育をそのまま続けているだけなのです。
戦後は工場に人を大量に詰め込み、効率よく働かせることで経済をガンガン回していました。
そんな社会では、「右向け右精神」で統率できた方が、効率がいいからです。
しかし、今の日本はそうではないですよね。
戦後と比べたら、あらゆるコンテンツが世の中に溢れています。
あらゆるコンテンツが溢れているということは、1つ1つのコンテンツの価値は下がるということです。
例えば、大量生産されている腕時計は価格が安くても売れ残り、この世に限定100個しかない腕時計は驚くほど高額でもあっという間に完売してしまいます。
そんな時代で僕らが選ばれるようになるには、自分の美学を自由にしてやる必要がありあます。
なぜなら、あなたの美学を抑制するということは、大量生産されたその他のコンテンツとあなたを同列にする行為だからです。
コンテンツが溢れる今の時代だからこそ、あなたの美学を思い出さなければいけません。
それはあなたの幸福のためにも、経済的なビジネスの面でも言えることです。
美学とWHY
美学とは本質のことです。
例えばあなたがファッションが好きだとします。
しかし「ファッションが好き」な人はこの世には星の数ほどいますよね?
もし、あなたが、
「私はファッションが好きだー!」
…と一生懸命叫んでも、大量生産のうちの1つにしか見えないのが現実です。
ではそこに美学という概念を加えるとどうなるでしょう。
あなたがファッションが好きになったのは、ファッションがあなたの美学に共鳴したからです。
つまり「なぜファッションが好きになったのか?」という部分があなたの美学であり本質なのです。
ファッションが好きな人は確かに大勢います。
でも「なぜファッションが好きなのか」という理由は人それぞれです。
このように、これからの時代は、
「Why(なぜ?)」
を語れることが重要になってきます。
「Why(なぜ?)」は本質であり、あたなの美学なのですから。
今回は「Why(なぜ?)」の力を分かりやすく説明している動画を紹介しますね。
その動画では、
-
- なぜAppleは数あるIT企業の中で成功したのか?
- キング牧師はなぜ多くの人を惹きつける演説ができたのか?
- 他のグループより人材も資金も少なかったライト兄弟は、なぜ人類で初めての友人動力飛行を実現できたのか?
…といった世界の謎を紐解いてくれます。
実は上記に並べた謎にはある共通の原理原則があるのです。
動画を視聴すれば、あなたは世界がどう動いているのかを理解することができるでしょう。
人を動かす組織や指導者は共通して、他の人とは正反対のことをしていることがわかったのです。
それはとてもシンプルな原理原則でした。
では早速ご覧ください↓(18分34秒)
※この動画内で語られている内容に「Why=美学」と当てはめてみよう。
動画でサイモンが話しているのは、芸術家の本質でもあります。
例えばピカソの絵画があったとして、その絵画は「結果物」です。
大切なのはなぜその絵画を描いたのか?ということ。
つまり絵画は結果物でありゴールです。
「なぜ描いたのか?」はゴールに行くまでのプロセスなのです。
アートを鑑賞するのは、どのような経緯で創造されたのかを知ることなのです。
人間はこの「なぜ?」で価値判断をしているからです。
それが本質なのです。
サイモンの話はその本質をビジネスに応用しているのです。
以前のコラムで、これからのビジネスは結果ではなくプロセスに価値が見出されると話しました。
アートとビジネスはそういう意味で同じなのです。
結果物に価値がありそうで、実はプロセスが重要。
そのプロセスがWHYです。
何度も繰り返しますが、プロセスこそが本質です。
結果はプロセスがあって成り立つのですから。
プロセスなき結果はありえないのです。
あらゆる物事の本質を見るには「なぜ?」と問いかけ、その物事のプロセスを見出すべきなのです。
USPからMSPへ
もう少しビジネス的な目線で語るとどうなるでしょう。
マーケティング用語でUSPというものがあります。
これはユニーク・セリング・プロポジション(Unique Selling Proposition)の略です。
要は「この商品が他社製品にはない差別化できるユニークなポイント」のことですね。
俗に言う「売り」ってやつです。
-
- この業界でNo. 1
- 他製品にない機能つき
- 独自のサービス
みたいなやつ。
そもそもコンテンツが少ない時代ならこのUSPは重要でした。
しかし現代はあらゆるコンテンツが溢れています。
いくら必死にUSPを叫んでも、
「それ〇〇っていうメーカーが既にやってますよ」
…と言われるのがオチです。
そう、現代は真のUSPなど存在しないのです。
コンテンツやサービスが多様化しすぎて、何をしても結局、誰かの二番煎じにしかならないのが今の時代なんですね。
YouTuberも奇抜に見えて、実は他のYouTuberと同じようなことをしてたり・・・みたいなことありますよね。
じゃあ僕らはどうすればいいのでしょう?
どうやって差別化をしたらいいのか…。
安心してください。
その答えが「WHY(なぜ?)」であり美学なのです。
ビジネスの最先端を学んでいる人も皆この事実に気がついています。
彼らの言葉で表現すると、これからの時代で必要なのはUSPではなく、MSPです。
MSPはミー・セリング・プロポジション(Me Selling Proposition)の略です。
これは選ばれる理由が「私(Me)」つまり「人」であるということです。
これからの時代、選ぶ基準は「人」になってきます。
つまり、何を買いたいかではなく、誰から買いたいかということ。
そしてその人を選ぶ基準が美学なのです。
人々は美学を感じた人に好感を持つし、美学に共感した人から買いたいのです。
僕はあまりYouTuberは見ないんですが、結構好きなYouTuberが1人います。
他のYouTuberのチャンネルはほぼ見ないんですが、そのYouTuberはなんとなく見てしまうんですよね。
なんならチャンネル登録もして2ndチャンネルまで登録しちゃいました。
公式に出しているパーカーとかちょっと欲しくなっちゃう自分に驚いているくらいです。(デザインは別に好みじゃないのに)
僕はそのYouTuberに美学を感じて共鳴しているのです。
美学って必ずしも言葉にする必要はありません。
美学とはその人の活動を通して感じるものなのです。
一番大事なのは美学を体現して活動すること。
だからYouTuberとして自分の美学を体現した動画を発信すれば、その美学を感じた人がファンになっていくんです。
だからこそ、全然好みのデザインじゃないパーカーが欲しくなっちゃったりするんですね。
あなたにもこういう発信者の1人や2人いるんじゃないでしょうか?
例え同じ話を別のYouTuberがしていても、
「私の好きなYouTuberから聞きたい」
となるわけです。
これって話を選ぶ基準が「人」になってますよね?
どの話を聞きたいかではなく、誰から聞きたいかで選んでいるんです。
これがMSP的な選ばれ方です。
こんな感じで、これからの時代は「人」を基準にコンテンツやサービスを選ぶようになります。
そしてその選ばれ方は、
-
- 「なぜ、僕がこのコンテンツを発信するのか」
- 「なぜ、私がこのサービスを提供するのか」
…という「WHY(なぜ?)」で選ばれるようになるということです。
それが僕らの言葉で言う美学というわけですね。
つまり、
MSP=WHY=美学
です。
もっと言うなら、
美学とはあなたの人生のコンセプトであり、あなたの人生をかけて達成すべきミッションなのです。
僕らは普通に生きていると、自分の美学が見えなくなります。
ミケランジェロが大理石に天使を見出したように、僕らは自分自身の中に美学を見出さなくていけません。
今回紹介したサイモンシネックの動画は必ず視聴してくださいね。
WHYとは美学のことで、芸術家的教育者の生き方の基礎になる概念を解説してくれています。
「同じ才能を持っている人など、いはしないのだ。
だから自分の才能が何か、見極めて使いこなすことだ」
:フランク・ゲーリー[建築家]
まずはあなたの美学を見極めていきましょう。
それがこれからの時代を自分らしくクリエイティブに生きていくために必要なのです。
このMSPという概念は非常に重要なので、今後もちょいちょい出てくるキーワードです。
何度も読み返して復習しておいてくださいね。